人形浄瑠璃文楽公演 2020年9月 第一部
2月を最後にコロナ禍によりしばらく公演の無かった国立劇場での文楽公演、やっと、とうとう9月に公演再開となりました。開幕すぐ、休演がたしか二日ほどあったかな?でもその後はコロナに影響されることなく、咲大夫さんもすぐに復活して公演を重ねてくれたので予定通り久々鑑賞できました。うれしい。
四部制にして休憩・入れ替えを増やし、各公演での休憩時間をゼロまたは短くしてお食事時間をとらない(=マスクをとらないで済む)ような異例の演目構成にしてあります。各部入れ替え時や開演前のお食事はロビーや客席ではとらずに食堂や休憩所を利用してくださいとのこと。
ちらしに抜擢の三番叟のお二人。18分の間、ぜーぜー言いながら?舞い続けてくれました。
上演時間
寿二人三番叟 18分
<休憩> 15分
嫗山姥 廓噺の段 1時間
開演11:00 終演12:33
演目・演者・あらすじ
寿二人三番叟 ことぶきににんさんばんそう
嫗山姥 こもちやまんば 廓噺の段
作:近松門左衛門
座席からの見え方 12列目下手 50%の定員で快適そのもの
前後左右の座席を空けたチェッカーボード式の座席配置。12列目の下手に座りましたが、ヒトの頭に悩まされることも全くなく快適!おそらくどこの座席に座っても今までと比較できないくらいに見やすいのではないでしょうか。こんな贅沢に慣れてしまうともとの座席に戻ったときつらそうです。が、興業的には、ね。
販売されていない席には荷物を置くことすらできないように覆いがされています。
退出も列を区切って密にならないように係員が誘導。
感想 再開おめでとう
寿二人三番叟
この演目が朝一番からスタート。なので普段公演開始前にある三番叟は省略されています。パンフレットによると『もとは特別な格式をもつ祝儀曲。劇場の再開にあたり、再厄を払い平穏な世が戻ることを祈念』し演じられるとのこと。朝から活気のある軽快な語り・三味線に合わせて鈴を鳴らしながら生き生きと踊り狂ってくれます。かしらが二種類「検非違使」と「又平」。又平の方が先に踊り疲れてぜーぜーと肩を上下させてサボったりと愛らしくもあり劇場内を明るい雰囲気に。玉勢さん、蓑紫郎さんお二人も汗だく、足も必死の幕開けにふさわしい18分の舞。
嫗山姥
山姥=やまんば は雰囲気で察するも 嫗=こもち って読めませんでした、むずかしい。夫・坂田時行が胎内に入った八重桐が娘のカシラから時折口裂けのガブ(角はない)へ。怪力ぶりを見せ立ち回りをするというエンディング。こういったファンタジーは人形の文楽にこそふさわしく興ざめすることなく楽しめます。ちなみにこの嫗山姥ではこの八重桐から生まれるのが坂田金時=金太郎だそう、そりゃあ金太郎も熊と戦うわけです。
時行のいる前で身の上話、恨み節を「ちょっと聞いて下さいよ…」な感じで語るのも面白い。勘十郎さんの八重桐と千歳太夫さんの躍動感のある語り、楽しかったなあ。
9月公演一~三部の中ではこの一部が最も席が空いていました。観なくちゃもったいない、こんな楽しい演目なのに。
久々の公演
太夫の前にアクリル板なんかが置かれていたらちょっと興醒めだな、と思っていたらそのようなことはなく以前のままのスタイル。上手席を9列目くらいまで販売しないことで飛沫対策されています。
一部が2~3時間の短い構成でちょっとぶつ切りなので古参のファンからの評判はどうなんでしょう、という気はしますが、oharu自身はこの短い構成が本当にありがたい。長い演目、1時間半以上休憩のない演目は一度睡魔に襲われると立ち直れない・疲れる、のでぶつ切りと言われようがこの短時間の構成の方が集中もできて楽しめ、歌舞伎の一幕見の感覚に近くて有り難い気すらします。4部すべて見ようとするとチケット代も5,500円x3+4,500円=21,000円、決して今までの料金と比べても高すぎるということもなさそうですが。
というわけでやっと文楽公演が戻ってきてくれました。三番叟の捧げた舞が届いて、また公演が観られますように。
【チケット代】一等 5,500円
【パンフレット】700円