人形浄瑠璃文楽公演 5月第二部 いもせやまおんなていきん
通し狂言だけど、一部・二部をぶっ続けで観るパワーなし。先日第一部は観劇済みなので、最後の記憶を呼び起こし、勝手に通しの気分にして二部に臨む。
妹背山婦女庭訓第一部 観劇 5月文楽公演 国立劇場小劇場上演時間
妹山背山の段 15:45ー17:40
〈休憩25分〉
杉酒屋の段/道行恋苧環 18:05-19:06
〈休憩10分〉
鱶七上使の段/姫戻りの段/金殿の段 19:16-20:53
座席 見え方
10列目 下手ブロック左はじの方。第一部を凌ぐ人気でサイト覗いたときには選択肢乏し。中央近くに座った方が上手・下手の両床をしっかり楽しめると思うのでおすすめ。左側(下手)に普段はない床↓。
否応にも期待が高まる。舞台はかろうじてぎりぎり見きれなかった、かなという感じ。
演目 妹背山婦女庭訓 演者
感想 クライマックスから始まるって…そして負けるなお三輪
三段目の後半、妹山背山の段というクライマックスから始まる不思議な第二部。両床に太夫・三味線が座り、緊張感・特殊な空気が張り詰め、こちらまで背筋がピンとするような空気。約2時間だけど、あっという間。
中央をの吉野川をはさんで右手に背山、左手に妹山。奥だけでなく手前にも桜が満開で華やかな舞台ながら悲劇的な結末、ギャップが大きい。桜満開だが、妹山にはヒナ飾りあり。あれっ?と思うが旧暦三月ですか。
悲恋、というけれど、雛鳥・久我之助の当人たちは最終的に強い意志で死を選択しているわけで前向きな死にも見える。しかし、殺害するもしくは介錯する、双方の親にとっては悲劇でしかない。雛鳥の頭と一緒に嫁入り道具に見立てたひな人形・道具を吉野川から熊手やらをつかって引き上げる(首の乗った駕籠は紐の付いた何か?でたぐりよせる)大判事もせつない。生首がひな人形と嫁入りってどれだけホラーなんでしょう。
藤太夫・織太夫さんに始まり、千歳太夫(大判事)・呂勢太夫(定高)さんの太夫同士の語り分け、から一時も目が離せない。太夫の語りは役者が語る以上に感情があふれんばかり、人形に感情移入ができる。
山の段に続く四段目、突然話が変わる。お三輪ちゃんの恋患い、嫉妬に狂い嘲笑され、最後刺されるまで。その血が入鹿征伐に必要なのだーと鹿殺しの段とつながるのだけど、山の段とそれ以降が全くつながっておらず構成としてどうなんでしょうか。勘十郎さんのお三輪ちゃんがいじらしく、生き生きと動きまくる、こんなにも恋に狂って執着するなんて少女ながら怖いぐらいだわーなんて思ってたら、最後のさいごで「枕交はした身の果報……」。えーっ!!、寺子屋に通ってる隣の少女にちょっかい出す求馬が悪い、下劣。「もう目が見えぬ…」って筋を知っていても涙。一旦納得しても呪って出てきていいよ、と思う死に方。
お三輪・雛鳥…と第一部・二部両方で何名か絶命するが、理不尽な死チャンピオンと言えばやはり第一部、芝六忠義の段の杉松。その他の方々はなんとなく大義が(納得できるか否かは別として)ありますが、杉松はちょっと別格。本人には何ら貫き通すものがありませぬ。時点はお三輪ちゃん。なむー。
それはそうと、帯刀しているということは武士?でも時代は飛鳥?あれっ?寺子屋からお三輪ちゃん帰ってきたけど江戸時代では?というわけでこの作品はフィクションでございますってことなのね。文化背景は江戸時代、舞台は奈良、で天下を取るのが蘇我家ってことでしょうか。
山の段はあっという間、その後も集中すると、もうくたくた。5時間以上劇場滞在し21時に終了すると、コンタクトレンズもかぴかぴで疲労困憊(座ってるだけのくせに)。是非この後の入鹿征伐まで見てみたいものだけど、そこまで上演したら何時終演?終電?、落伍者多数と思われる。そもそもこの演目、三部制にはなりえないんでしょうか。
山の段だけ聴きに来る人、という方が思ったよりもおらず、席はほぼ埋まったままだった。濃厚な5時間。
【チケット代】一等 7,300円