鶊山姫捨松・壇浦兜軍記 観劇・感想 2月文楽公演|国立劇場小劇場

人形浄瑠璃文楽公演 2月国立劇場小劇場 第三部

第三部公演 ほぼ満員 チラシとポスターになった阿古屋

2月文楽公演 阿古屋

上演時間

鶊山姫捨松   1時間4分
休憩    20分
壇浦兜軍記   1時間

開演18時 終演20時34分

座席 見え方

9列目下手ブロック左より。ほとんどのお芝居は舞台中央でなされている印象。問題なし。

余談:幕が開いて5分もたたないうちにいびきをかいて眠る人がいたのにはびっくり。じきに起きたけど。1時間続いたらどうしようかと。

演目  鶊山姫捨松 ・壇浦兜軍記 あらすじ・演者

鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ) 中将姫雪責の段
作:並木宗輔

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき) 阿古屋琴責の段
作:文耕堂ら

2月文楽 第三部あらすじ

2月文楽第三部演者

感想・おぼえがき

演目二つとも、ヒロインもの。拷問される女と、音楽奏でさせられる女と。なんてったって「雪責(ゆきぜめ)」と「琴責(ことぜめ)」ですもの。美しい女がいじめられるのを覗き見るようで、嗜虐心をくすぐるのだろうか。なぜこの二演目がセット?

鶊山姫捨松

桐の谷と浮舟が枝をふりかざして喧嘩をしたり、割竹でパシンパシンと姫が叩かれたり、なかなか激しい舞台。淡いピンク色の肌襦袢姿の中将姫がこれでもかっと叩かれる、しかも雪の上で、乱れ髪で。蓑助さん遣う中将姫が、健気さ、哀愁ぷんぷんにおわせる。當麻寺のHPによるとこの場面の姫は14歳。継母に虐げられ、父に見捨てられ、命からがら鶊山に逃れたのち読経三昧。出家するのが必然の流れといえよう。

最後の場面に、父・豊成が登場。かぶせた打掛に隠れていた中将姫が、一目父の顔見たさにちょろっとのぞくのが意地らしい、かわいらしい。あまり前の方の端に座ると人形遣いさんの陰になってこのシーン、見えにくくなりそう。今回座った席でもぎりぎりな感じだったので。

壇浦兜軍記

こちらは琴責といっても琴で殴るわけでははありません。琴・三味線・胡弓の三曲を弾くという拷問(これを拷問とよぶか?)を傾城阿古屋が畠山重忠に課される。

凛とした阿古屋が美しい、華々しい。琴の爪つけから始まる、こ、細かい。琴の演奏が終わったら、打掛を脱いで三味線、胡弓を演奏。

勘十郎さんだけでなく、三人の人形遣いが顔出し出遣いの阿古屋。左遣いは吉田一輔さん、足遣いは自分の場所からはよくわからず。まさに共同体としての傑作、阿古屋。そこに、演奏・太夫が加わる。ほぼ阿古屋の独り舞台なわけで、遣ってるお三人、それは大変だろう、と。よく腕がぷるぷるしてこないものだ。そもそも、人形遣いさんも楽器の心得がみなさんあるのがよくわかる、いやー、本当に阿古屋が演奏しているように見える。弦を抑える左指もちゃんと動かしてるのだ。

拷問タカ派の岩永が「拷問に事寄せ自分の慰み気晴らしをやらるるな・・」というように、自分の興味・欲求を満たしているだけじゃないの?重忠よ、と誰もが思う。まあ、そのおかげで素晴らしい演奏が聴けたわけです。ありがとう、重忠。

演奏中、舞台中心の阿古屋以外の周囲はじっと固まって、無機質なものになっているのが文楽あるあるなのだけど、阿古屋の胡弓を聴き、火鉢にあたっていた岩永がノリノリになり、しまいには火箸を用いて胡弓演奏をまね、会場にクスクスと笑いを引き起こす。琴責に懐疑的であった岩永までも動かす乱れの無い演奏をする阿古屋。

人形も見事ながら、演奏・太夫も素晴らしく、ああ、また観たい、と思う演目。12月に歌舞伎座にかかっていたようけど、玉三郎の阿古屋を一度観てみたいものだなあという気になった。

雪責でどんよりした気分を、後半の琴責でスカッとさせるという組み合わせであった。

幸せなことに2月は三部とも観劇。この三部制が、チケットとりやすいし、長すぎないしで好み。さすがに一日で連続してすべてを観る体力はないが三日に分けて満喫。毎月上演していなくて、ある意味助かる。しばしお休み。

【チケット代】一等席 6,000円

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