湯岐温泉 和泉屋旅館 宿泊記②ぬるすべの上質湯 鹿の湯・八幡の湯 温泉編【福島】

藤田東湖も湯治した和泉屋旅館

前回、客室・お食事まで

湯岐温泉 和泉屋旅館 そばの実せんべい湯岐温泉 和泉屋旅館 宿泊記①秘湯の快適和室・お食事編【福島】

温泉は二か所、混浴の鹿の湯と男女一か所ずつの八幡の湯。もちろん加温・加水・消毒なしの源泉かけ流し

和泉屋旅館のリーフレットによると湯岐温泉は天文3年(1534年)、和泉屋先祖が開湯発見時に鹿が傷をいやしていたことから「鹿の湯」とよばれていたそう。動物伝説は温泉につきものです。和泉守として源泉を守ったのが屋号の由来、約500年前からの伝統ある温泉。

湯岐温泉 和泉屋旅館

鹿の湯は花崗岩の割れ目から湧き出ている自噴泉。

湯岐温泉 和泉屋旅館 温泉

入浴時間は6時-23時まで。夜中に入るような湯治は不健全ということでしょう。深夜入れないかわりに、チェックアウトぎりぎりまで入浴可という点はありがたい。

2021年大河ドラマ「青天を衝け」で渡辺いっけいさんが演じていた水戸藩の藤田東湖(数年後にはなんのことやら、ですが)、こちらの温泉で療養していたそう。歴史ありですね。今年は大河についていってるのでタイムリーでした。
湯岐温泉 和泉屋旅館  

鹿の湯 難易度高い混浴!

まずは鹿が傷をいやしていた鹿の湯へ。混浴に女性専用時間があるとは事前に知っていたけれど、HPにも時間記載なし。夜と早朝の二回かな、と勝手に予想していたらまさかの15時―16時枠の設定があった。当日チェックインしたのはすでに一回目の入浴チャンスが終了してしまった夕方、というわけでショックをうける。特急車両でテーブルに足を置いてる人を発見した時とおなじくらい、のかなりの衝撃。だって、チャンス半減ですよ。女性の皆さま、前日にでもお問い合わせすることおすすめします。

湯岐温泉 和泉屋旅館 温泉

鹿の湯の脱衣所は男・女にわかれ、奥が女性用、手前が男性用。中はシンプルに棚と籠だけ。コロナ対策で籠三つだけ。スリッパがあるかないかで入浴者がいるのか判断できる。脱衣所の電灯は人を感知して点灯するけれど、しばらくいないと消えてしまうので浴室内のヒトの有無の参考にはなりません。

湯岐温泉 和泉屋旅館 温泉

脱衣所の扉をあけるとすぐに湯小屋。黒御影っぽい縁の湯船、底は鮮やかなブルーのタイル。左の大きい湯船が加温なしの源泉かけ流し、奥の黒い箱の底で自噴した湯がそのまま注がれています。右の小さい湯船は八幡の湯を加温したもの、底から給湯。冬場はやはり加温を要する方がいるみたい。

湯岐温泉 和泉屋旅館 鹿の湯

大きい湯船の源泉近くに湯口。手を当てると絶え間なくお湯が注がれている。湯岐温泉 和泉屋旅館 鹿の湯

湯口の反対側の小さいな穴から排水。さらにそれ以上の水量は湯枠を超えてザーザーとオーバーフローです。
湯岐温泉 和泉屋旅館 鹿の湯

浴室には源泉がそのままでるシャワー・カランが一つありました。

38℃程度のお湯はぬるすべ感もここちよく、鹿と同じく気持ちよい湯浴みを楽しめる。ぬる湯と言うほどのぬるさでもないので、1時間つかりっぱなしというわけにもいかないけど、ほとんど空気に触れることなく注がれたお湯を堪能できる贅沢さ。

以前はこの鹿の湯もぬるいので奥の八幡の湯を混ぜていたそう。震災で湯温があがり、混ぜなくても適温になったので鹿の湯を単独で楽しめるようになったとのこと。大きな地震の前は湯量が減ったり、地震後に湯量が増えて湯温が上昇したりするそう。温泉は生きものですね。でも湯量が減ると誰にもいえないけどビクビクしてしまいそう、こわい。

この混浴は浴槽も小さいうえ、お湯も無色透明。脱衣所こそきっちり分けているものの混浴難易度上級、エベレスト級。気合をいれて入浴してもリラックスできないんじゃあ、ということで結局女性専用時間に入るしかなくなるのですが、それも短い(2時間/総入浴可能時間12時間)。深夜も入浴可ならその時間を狙うこともできるのだけど、それもまたできない。というわけでほぼ男湯として存在している鹿の湯。男ばっかりいいなあ、とツレと険悪になるので是非女性の時間をもう少し長く設けてほしいものです。男性だって男性専用時間にのびのび―っと楽しみたいんじゃないのでしょうか。

八幡の湯 女湯

鹿の湯を通り過ぎて、さらに奥に進むと八幡の湯。掘削自噴のお湯で41℃くらいといってたような…手前が男湯、奥が女湯の男女一つずつ。入れ替えはありません。

湯岐温泉 和泉屋旅館 温泉

感染対策で3人までの入浴制限、脱衣籠も3つ。備え付けのドライヤー一個だけのシンプル脱衣所、清潔です。

湯岐温泉 和泉屋旅館 温泉

こちらも鹿の湯と同じ黒御影っぽい縁と鮮やかなブルーのタイルの湯船。女湯のガラス窓はすりガラスや目隠しがしてあり眺めはありません。白い壁・仕切りで大きな湯船を二つに分断、男湯と女湯に分けられています。湯中の目隠しフェンス状のところでお湯が行き来。女将さんがお嫁に来た20年ほど前は、仕切りなく大きな混浴大浴場だったそう。

湯岐温泉 和泉屋旅館 八幡の湯

シャワーは写真に写っているものともう一つの計2カ所、シャワーも源泉かけ流し。湯船ではわからないけれど、シャワーを浴びるとふんわりたまご臭を感じる、無味な感じ。源泉が適温・豊富だからこそできるかけ流しシャワー、温度調節もなくひねるだけの贅沢。”上がり湯も温泉”可能。

湯岐温泉 和泉屋旅館 温泉

無色透明のお湯が美しい。石造りの湯縁から贅沢なくらいにあふれでて左端の排水口へ流れていくのは圧巻。トド湯もできそうなくらい。アルカリのお湯はやはりぬるすべで気持ちいい、床も当然ぬるつくので注意。

湯岐温泉 和泉屋旅館 八幡の湯

でも、あれっ、私の好きなゆ、湯口がどこにもないんですけど。湯岐温泉 和泉屋旅館 八幡の湯

男湯湯船内には湯口があるそう。負けたっ、ここでも負けました。新鮮な湯はまず男湯に注がれるという事実、そしてそのお湯が女湯からかけ捨てられているという哀しさ。シャワーの数だけは勝ちました(男湯は一つ)、はい。

温泉分析表(平成27年7月)から

分析表は2源泉混合したもの。浴槽にて採水となっているので鹿の湯に八幡の湯を混ぜていた当時のものでしょうか。

源泉名:湯岐温泉和泉屋旅館(混合泉)
泉質:単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)
源泉:38.6℃
pH:9.6
湧出量:78L/min 自然湧出・掘削自噴
溶存物質0.1774g/kg、成分総計0.1774g/kg

感想 秘境なのに鄙びてない清潔湯治宿

秘湯を守る会のお宿ではありませんが、秘境にあるまさに秘湯、歴史ある湯治宿。もっともっと鄙びた感じかと思いきや建物や湯小屋はリニューアルしてあり清潔、廊下もピカピカの快適なお宿でした。ところどころミシミシと音を立てる扉なんかもありましたが問題なし。肝心の温泉も裏切ることなく素晴らしく、混浴問題さえクリアできれば最高の温泉です。お一人様でも宿泊できるのも吉、当日も数人おひとり様お見かけしました。

昔からの湯治宿の混浴は文化かもしれないけど、県によっては銭湯の異性混浴の年齢制限がじりじりと引き下がる昨今、なかなかハードル高くて辛いものがあります。80歳くらいになったらどうでもよくなるのかなとも思うけど、辺鄙な味のある温泉宿に行くことの方が困難、いわゆる無理ゲ―というものです。まあ、どういった設定をするのも宿の自由なんですけどね。教訓:湯治系のいいお湯は男性に優しい。自分が男性だったら頻回に通ってしまいそうです。

こちらの温泉は一階、お食事も一階、湯治系お宿にありがちな階段地獄はないので一階客室に宿泊すれば足腰問題あっても温泉楽しめるのがうれしいところ。明るくテキパキした、いかにも働き者という雰囲気の女将さんも感じよく、間違いなく気持ちよい滞在ができるお宿。まあ、混浴はあれだけど、また是非泊まりたいお宿・温泉であるのは間違いありません。ぬる湯というほどぬるくもなく適温なので寒い時期にも心地よいとにらんでます。〈宿泊2021年6月〉

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